2023年2月22日
音声ガイドの収録を終えた有働由美子さんにお話をうかがいました。

有働由美子さん

有働由美子(うどうゆみこ)

1969年、鹿児島県生まれ。91年にNHKに入局し、ニュース番組やスポーツ番組などを担当。紅白歌合戦の司会も務めた。2010年に『あさイチ』のキャスターに就任。18年3月にNHKを退局し、同10月から日本テレビ系『news zero』でメインキャスターを務める。

1. 美術展の音声ガイド収録はいかがでしたか?

美術館の音声ガイドは、絵と対峙しているときに邪魔にならず、もっと深く絵を見られるような影響を与えるというお仕事なので、非常に名誉であると同時に、難しいんです。あと、声が若い頃から低いのですが、普段の生活に近い声でやらせていただいて、楽しい収録になりました。

2. 佐伯祐三は、有働さんと同じ北野高校(佐伯祐三の在学中は北野中学校)の出身です。佐伯祐三について、どのような印象をお持ちでしたか? また、収録を通じて変化はありましたか?

すごい作家さんですよね、すごい画家さんですよね、くらいの印象で、北野高校ご出身ということも、自分の学校に貴重な作品が飾ってあったということも存じ上げず……。本当にもったいないことをしたなと思います。作品を見ていると、すごく北野の校舎に似てると思いました。みんな元気いっぱいの高校なんですけど、どこかに何か重いものを背負っている感じがあって、校舎の中が暗くて静かで少し冷たくて、でも所々光がとても綺麗に当たっている、という学校だったので。なんかそれをすごく思い出しました。すごく校舎の雰囲気と重なる絵がたくさんあるなと思いました。

3. 気になった作品はありましたか?

ロシアの貴族の娘さんを描いた作品《ロシアの少女》です。この少女が抱えているすごく大人びたところと、子供っぽいところ、危うげなところと幼さがでている。でも、後ろの壁がすごく明るいオレンジ、黄色で、着ている衣服はその民族衣装の華やかな色が混ざっていて。一言で説明できないいろんな感情が、ピタっとはまっています。すごく不思議でした。佐伯が彼女に会った時期も踏まえると、(佐伯は)ボロボロの体ですよね。これをもしすごく元気なときの佐伯が描いたらどういう感じになるんだろう。十分に元気ではないときでも描きたくなる、描いたっていうのは。どういう思いでモデルの少女に向かって、何をつかみ取って描いたんだろうって、会って聞いてみたくなりますね。

4. 展覧会にいらっしゃる方へのメッセージを。

1枚の絵の中に悲しみ、喜び、狂気、冷静さが詰まっているので、どの絵を見ても全員が違う感想を抱くのではと思います。これ明るい絵だねっていう人もいれば、これすごく重苦しいっていう人もいて。佐伯祐三と向き合うのですが、イコールご自分の心と向き合う気がする作品が並んでいます。自分のための時間、ゆっくりした時間を過ごせると思うので、なるべくたくさんの方に来ていただきたいです。

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